- 2023.08.10
不動産IDでオーナーや消費者にメリットは?
「マイナンバーと健康保険証の一体化」によるトラブルが全国で発生していて、我が国のデジタル化の遅れが指摘されていますが、この流れが止まることはないでしょう。そして、このデジタル化の波は不動産にも及んできています。それが、土地・建物のマイナンバーとも言える「不動産ID」です。
また、不動産IDの情報に加えて、大家さんのための税金基礎講座や洋室でも選ばれるオシャレ襖の施工事例もご紹介いたします。
不動産IDは17桁の番号で形成
「不動産ID」とは、土地や建物を特定するための番号です。すでに土地と建物には「不動産番号」という13桁のコードが付けられています(登記簿の表題部に記載されている)。それに4桁の特定コードを付け足して17桁の不動産IDとなります。
オーナー様のアパートや賃貸マンションの場合は、建物の不動産番号(家屋番号ではない)に、特定コードとして「部屋番号」が付け足されることになります。201号室なら「0201」が不動産番号にプラスされることになるわけです。つまり部屋ごとに不動産IDが付くことになりますね。
なぜ、不動産IDが求められるのか?
不動産に共通の番号が付くと何が変わるのでしょうか? マイナンバーの場合は、住民登録や免許証や健康保険など、バラバラに登録されている個人情報が紐づくことで、様々な行政サービスが受けられるようになる、とされています。
同様に、不動産に関する情報を扱う機関もバラバラで、国交省、法務局、市区町村の都市計画課、土木課、道路管理課、建築審査課、開発指導課、防災課、環境保全課、資産税課、水道局、電力会社、各自治会など、両手に余る数になります。もし、売買や建築などの理由で不動産を調査するときは、それぞれの機関を回らなければなりません。
たとえば、土地活用の目的で調査をするとき、土地には「地番」と「住居表示」という異なる標識が存在していて特定に時間を要したり、水道やガス、下水というインフラの整備状況の調査にも、下水道は市区町村、ガスは民間会社など、別々に調べなければなりません。
もし複数の会社に土地活用の提案を依頼したときは、得られる情報の結果は同じですが、各社が同じような、無駄とも言える手間をかけることになります。この労働生産性の低さは、最後には発注側へのコストとして跳ね返っているかもしれません。不動産に共通の番号が付いて、どこかで一元に誰でも確認できるようになることは、大きなメリットと言えるでしょう。
不動産IDは、2022年3月31日にルールを定めてガイドラインが発表されました。そのガイドラインによると不動産IDは、「不動産業界の生産性と、消費者利便の向上を図り、不動産の取引と活用を促進する」「デジタル社会を迎えるにあたり、不動産DX を推進する情報基盤整備を担うことにより、不動産市場の活性化と透明化を図る」と説明されています。では、消費者利便の向上とは、どんなメリットが想定されているのでしょうか?
オーナーと消費者のメリットは?
たとえば、建物の情報を共有することで、宅配サービスがさらにきめ細かくなることが期待されます。不動産情報が一カ所で容易に得られるため、その不動産の価値をより正確に評価できるようになるので、たとえ古くても手入れされた建物は適正な価格で取引されるようになります。
不動産の所有権移転などの手続きも、不動産IDを利用して行えるので手続きが簡素化されます。不動産オーナーも、ご自身の不動産情報を一元管理することができるので、建物の修繕履歴や融資実績などを、ひとつの情報ソースで確認することができるようになるでしょう。
これは不動産オーナーにとって間接的なことですが、募集情報を掲載しているポータルサイトへの重複掲載が、不動産IDによる紐づけによって判別しやすくなります。重複が無くなれば、「架空の物件情報が掲載される(いわゆるオトリ物件)」「同じ物件の情報が複数掲載されて分かりにくい」といったことが減少して、部屋探しする利用者の利便性が向上します。
この不動産IDは、利便性が高まる不動産業者のメリットが目立ちますが、不動産オーナーも含めた消費者も、複雑に管理されていた情報が一元化されて、それを誰でも簡単に見ることができるようになるならば、そのメリットは小さくないと思います。
ただし、マイナンバーのように、理想を実現するには紆余曲折があることでしょう。それぞれの不動産情報を持っている役所やガスなどの民間会社、そして個別に情報を抱えている不動産会社などの情報が、どのように一元化されるかについては、まだイメージできていません。そのメリットを現実に感じられる日が早くきてほしいところです。
大家さんのための税金基礎講座
今回は弊社に依頼のあったオーナー様の中で、「共有となっている不動産を解消し納税資金も確保できた事例」を紹介させていただきます。
まず「相続対策と相続税対策」の違いについてです。相続対策というと多くの方が「相続税の対策」と理解されると思いますが、この2つは似て非なるものです。相続対策とは財産の有無にかかわらず、すべての方に必要です。これには、順番があり
- 現状把握
- 争続対策
- 納税資金対策
- 相続税(節税)対策
の順に行います。
1.現状把握により財産をどのくらいもっているか、2.争続対策として相続人の間でどう分けられるか、を検討します。この段階で相続税が発生すると予測される場合に3.と4.へと進みます。これが相続税対策です。
つまり相続税対策は相続対策の一部であり、相続税が発生する場合にのみ必要な節税対策ですから、すべての方が対象にはなりません。まず、相続税の計算をして現金で払えるかなどの、3.納税資金対策を行います。そのうえで、相続税を生前に減らせるかなどの、4.相続税(節税)対策を実行していきます。したがって、相続税対策は必須ではなく、重要なのはすべての家庭に関係ある相続対策となります。
母と長男、長女の3人家族が弊社に相談に訪れました。亡くなった父は駐車場とアパート2棟を遺しており、すでに相続も済ませていました。
母 | 長男 | 長女 | |
駐車場 | 1/2 | 1/4 | 1/4 |
Aアパート | 1/2 | 1/4 | 1/4 |
Bアパート | 1/2 | 1/4 | 1/4 |
2棟のアパートの時価は同額であり、相続のとき家族が争わないよう、上記表のとおり法定相続分で遺産分割をしていました。弊社は、共有ではデメリットしかないので、早期の解決を提案しました。共有の場合は、修繕や売却のとき共有者全員の同意が必要です。母子の共有なら意思決定も容易ですが、孫の世代になると困難になります。そこで、母の生前に交換特例を利用して共有持分を解消する方法を提案しました。
通常は固定資産である土地や建物を交換した場合、譲渡があったものとして譲渡所得税が課税されます。しかし、同じ種類の資産(土地と土地、建物と建物など)と交換したときに一定の要件を満たす場合には、譲渡がなかったものとする特例があります。これを「交換特例」といいますが、これを受けるには次の要件を満たす必要があります。
- 交換により譲渡する資産および取得する資産は、いずれも固定資産であること。
- 交換により譲渡する資産および取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。
- 交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること。
- 交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと。
- 交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。
- 交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、いずれか高い方の価額の20パーセント以内であること。
今回はABアパート2棟の時価が同じで、上記の要件をすべて満たしていたので、長男はAアパート、長女はBアパートの持ち分の交換特例を適用することで下の表の持分になりました。
母 | 長男 | 長女 | |
駐車場 | 1/2 | 1/4 | 1/4 |
Aアパート | 1/2 | 1/2 | |
Bアパート | 1/2 | 1/2 |
そしてお母様に、「Aアパートは長男へ、Bアパートは長女へ」と遺言を書いてもらったので、お母様が亡くなった時には、遺言どおり相続して単独名義にすることができました。今回のように共有となっている物件は、交換特例の適用が受けられれば、譲渡所得税等の負担がなく単独名義にする手続きが取れるので効果的です。
この相続では納税資金もなかったため、駐車場の売却を前提として対策を立てました。売却のタイミングを、お母様の相続開始前か開始後にするかシミュレーションしたところ、開始後の評価額の方が低かったので、相続後に売却することで相続税額を低くおさえて納税資金を確保しました。お母様が亡くなってから3年10か月以内の売却なので、相続税額の一部を取得費とする取得費加算を適用することで、譲渡所得税の負担軽減に成功しました。
さらに、ABアパート2棟とも老朽していたため、相続税対策としてお母様の借入れで大規模なリフォームを行い、税額の減少につなげました。現在は入居率もよく健全経営をされています。
洋室でも選ばれるオシャレ襖の施工事例
賃貸住宅においては、「和室があるお部屋」は入居者が決まりづらく不人気だと言われて久しいと思います。ライフスタイルの変化に伴いフローリングの洋室が増えて、「畳で生活した経験がない」という若い世代の方もいらっしゃるので、抵抗できない流れのひとつでもあります。
本来は和室には、「足音が気にならない(上下階の音の問題)」「調湿効果がある」「すぐ横になれる」「子供が転倒しても安全」などのメリットがありますが、それでも洋室の方が使いやすいと感じる方が減ることはないでしょう。和室が避けられる理由をいくつか挙げてみます。
なぜ、和室が不人気なのか?
まず、布団を敷いて寝る人が少なくなっていることです。布団を畳んで上げ下げするのが面倒だと感じる方も多いでしょう。また、布団よりベッドの方が起きる時の足腰への負担が少ないと言われているため、特に腰や膝に持病がある方にとっては、和室に布団を敷くよりベッドで就寝する方が良いとされています。
次に、畳は隙間の埃やゴミは掃除機だけでは取りきれなかったり、その他にも飲み物などをこぼした際にシミがつきやすかったり、換気を怠るとカビが発生しやすかったりします。そのため、借主にとっては退去費用が高くなるなどの懸念もあるでしょう。
その他にインテリアの問題もあります。見た目が古く感じる、畳が凹んだり傷つきそうなため家具が置きづらい、おしゃれにインテリアできない、他の部屋と調和が取りにくいなど、洋室よりも使い勝手の悪さを感じてしまいます。
また、「わざわざ和室である必要がない」という意見もよく耳にします。これはフローリングの上に直接敷ける“置き畳”などのアイテムがあり、洋室であっても畳を敷いて和室のように使うことが可能になったためでしょう。床より畳の方が転んだ時の衝撃が少ないため、子どもが使うスペースのみ置き畳を敷いておく、リビングの一角に畳を敷いてくつろげる空間にするなど、置き畳をうまく使えば和室のメリットは洋室でも再現できるケースが多くあります。
地域によって退去時の畳の交換は貸主負担と借主負担は異なりますが、どちらにせよ畳の表替えの費用が発生してしまいます。フローリングに変更しておくことでルームクリーニングのみで済むというのは、入居者とオーナーともにメリットがありますね。
和室を洋室に変えるには費用がかかる
上記のような理由から、永い賃貸経営に備えて、「和室を洋室にリフォームしたい」と考えるオーナー様も多いようです。和室を洋室に変えるには、畳を撤去して床上げ工事をします。床の素材やグレードにもよりますが、6帖の和室をフローリングにするには、床部分だけで10〜15万円ほどの工事費用がかかります。
さらに、元の襖や天井が残っていると見栄えが良くないため内装も整える必要があります。押入れをクローゼットにして枕棚やハンガーレールを設置したり、襖を折れ戸や扉などの洋室建具に変えたりと、費用がどんどん膨らみます。元の和室の造りや状態にもよりますが、和室を洋室にリフォームするにはそれなりに費用がかかるのです。
リノベーション襖を使って費用を抑える
そこで、リフォームコストを抑える方法としてご紹介したいのが、襖に「リノベーション襖やアクセントクロスを貼って仕上げる」という方法です。押し入れをクローゼットに変えたり、洋風建具を入れたりするための大掛かりな工事をしないで、襖の張り替えのみで仕上げると、費用は少なく収まります。
「リノベーション襖」は、和室にも洋室にも馴染むデザインが多く種類も豊富です。張り替え費用は一般的な襖と変わりません。想像しにくいかもしれませんが、フローリングと襖、取手、クロス、照明などの、色やパターンを洋室に馴染むようにデザインすると、洋室に襖があっても違和感がなくおしゃれに仕上がります。また流行りの“和モダン”な雰囲気の洋室にすることもでき、デザイン力で物件価値のアップが狙えるのです。
「和室を洋室にリフォームしたいが費用がかかるし……」と迷ったときは、リノベーション襖などを使って工事費用を抑える方法もあることを思い出していただきたいと思います。
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