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2025.06.07

2025年6月の賃貸経営管理ニュース

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築26年の物件が変身!リノベで家賃1万円アップ

賃貸経営において、築年数の経過とともに課題となるのが「競争力の維持」です。とくに2DKタイプの間取りは、現代のライフスタイルに合わず、空室期間が長期化しやすい傾向にあります。

今回ご紹介するのは、市内中心部・駅徒歩6分という立地にある、築26年のRC造3階建て・全8戸の賃貸マンション。3階の住戸(55.1㎡/2DK/現状家賃5万円)が長期入居後に退去。原状回復にも一定のコストが見込まれる状況でした。

  • 物件情報(事例)
    所在地:市内中心部・駅徒歩6分
    築年数:26年(RC3階建て・全8戸)
    対象住戸:3階/55.1㎡の2DK(洋6・和6・DK7)
    現状家賃:50,000円
  • 競争エリアでの「3つの選択肢」
    周辺にはハウスメーカー系の競合物件も多く、そのまま募集すれば家賃ダウンまたは空室長期化のリスクが高い状況でした。そこで、オーナー様に以下の3つの案をご提案しました。

A案

  • 内容:設備交換 費用感:約30万円 
  • 想定家賃:現状維持(5.0万円) 
  • 空室改善効果:△競争力に不安

B案

  • 内容:家賃3,000円ダウン
  • 費用感:― 想定家賃:4.7万円
  • 空室改善効果:〇妥協策

C案

  • 内容:間取り変更+水回り刷新のリノベ
  • 費用感:約139万円 想定家賃:6.0万円 
  • 空室改善効果:◎差別化・家賃UP

    この時、オーナー様の中には「できるだけ長く賃貸経営を続けたい」という強い意向がありました。
    短期的に家賃を下げて埋めるよりも、物件自体の価値を高めることで、長期的に空室リスクを抑え、家賃の下落も防ぐ戦略を選択。将来的な物件価値維持、競争力向上も重視し、長期経営視点でリノベーションを決断されたことが、成功につながりました。

家賃1万円アップにつながった3つの工夫

  • 1:2DK→1LDKへ。開放感ある空間に再構築
    壁を撤去し、ダイニングと居室を一体化。14.5帖の広々としたLDKを確保し、周辺には少ない50㎡超えの1LDKという希少な間取りに再生しました。
  • 2:水回りの一部リノベーション。清潔感を向上
    キッチンは3口コンロ付きのシステムキッチンに交換。
    洗面台も65cm幅の独立型新品に。バスルームも一部リニューアルし、全体として水回りの清潔感を大幅に向上させました。
  • 3:「残す判断」でコスト抑制&統一感を演出
    「コストを下げるため」すべてを新調せず、既存の建具を最大限活用。茶系の建具に合わせ、フロアタイルも同系色で統一感を持たせ、コストバランスを取りつつ上質な空間を演出しました。


【結果】29日で申込&賃料1万円UPを実現
リノベーション完成後、わずか29日で申込。しかも家賃は従来の5万円から6万円へと1万円アップ。短期で成約できただけでなく、長期的に見ても物件価値向上に繋がる成果を得ることができました。今回のように、築古物件でも現代のニーズに合う空間設計を行うことで、「家賃アップ」「早期成約」「オーナー様・入居者様双方の満足度向上」を実現することができました。
今回の成功を受け、残りの7部屋もタイミングを見て順次リノベを検討中です。部屋ごとにアクセントクロスを変え、“選べる楽しさ”を取り入れた、若年層やデザインにこだわる入居者にも響く物件を目指しています。

上記の3つの選択肢に「どれが正解」という答えはありません。オーナー様の賃貸経営の方針や考え方によって適正解があるはずです。今回のオーナー様のように「これからも長く経営を続けたい」という方針であれば、適切なリノベーションを行うことで、物件の価値を高めながら収益を確保することができるという、ひとつのヒントとなる事例ではないでしょうか。

【第3回】地震災害に備えて「保険の検討」を

前回は「オーナーが準備できること」についてお届けしました。今回は“万一”に備えた「保険の検討」をテーマに、今一度、見直すきっかけとしていただければと思います。

ご自身の賃貸物件、地震保険は検討されたことがありますか? 近年の自然災害の増加に伴い、「備え」の重要性が高まっています。万が一の被災時、オーナーとしてどこまで対応できるか。その備えの一つが保険です。

今、あらためて地震保険が注目される理由

ご承知のとおり、日本は世界有数の地震多発国。加えて近年は、都市部や地方問わず、生活圏を直撃する地震が続いています。たとえば、2024 年元旦に発生した能登半島地震では、石川県内の住宅被害は6 万棟を超えました(石川県調べ)。

地震保険から支払われた保険金は、1,800 億円以上に上るとされています(損害保険料率算出機構)。こうした数字を見ると、地震保険が「現実に使われている」保険であることが実感できます。

地震保険、加入率は意外と低い?

2022年度時点での住宅全体の地震保険加入率は約66.6%(損害保険料率算出機構)。しかしこれは住宅ローン契約者を含む数字で、賃貸物件を所有するオーナー様の加入率はさらに低いと考えられます。「加入していたつもりだったけれど、実は火災保険のみだった」「古い契約内容で、地震特約がついていなかった」そんなケースも珍しくありません。

保険を検討するべき3つの理由

  • 【1】「自然災害は自己責任」の時代へ
    地震による建物倒壊や火災では、公的支援だけではカバーしきれないこともあります。全壊認定を受けた場合でも、被災者生活再建支援制度の上限は最大300万円。対して、建物の修復費用は1,000 万円以上になるケースもあります。結果、オーナー様が自費で対応するケースも少なくありません。
  • 【2】入居者・家族への責任
    建物が被災すれば、入居者の生活にも大きな影響が出ます。「仮住まいが見つからない」「荷物を取り出せない」「退去精算が進まない」など、入居者トラの目処が立てば、オーナーとしての責任を果たす道が開けます。
  • 【3】保険料は意外と手頃
    地震保険は火災保険の付帯として加入する形式で、保険料は地域・構造によって異なります。たとえば、鉄筋コンクリート造の物件なら、年間1万円以下で加入できるケースもあります。また、築年数や建物構造によって割引制度もあるため、一度見積もりを取ってみると、意外なメリットが見つかるかもしれません。

実際に支払われた例も

たとえば、2016年の熊本地震では、地震保険の支払総額は3,832億円(損保協会発表)にも上りました。これは、保険金がしっかりと支払われた証でもあり、保険の有効性を示すデータと言えるでしょう。もちろん、築年数や建物構造によって保険料は異なりますが、万が一の「倒壊」や「住めなくなる状況」への備えとしては、決して高すぎる出費ではありません。

確認したいポイント

■現在加入している火災保険に地震特約が付いているか
■保険金額(補償額)や補償対象の範囲
■建物の構造や築年数に応じた適正なプランか

【管理会社と連携しながら】
災害発生後、物件の状況をいち早く把握し、保険会社への連絡・調査・申請といった対応が必要です。
その際、信頼できる管理会社がいれば、迅速かつ的確な対応が可能になります。
「そもそも、今の保険は何をどこまで補償してくれるのか?」「古い契約のままになっていないか?」
そんな疑問があれば、まずは保険内容を一度確認してみることをおすすめします。

地震保険は「入るかどうか迷うもの」ではなく、オーナーとしてのリスク対策のひとつ。
まずは今ご加入の保険内容を確認し、「いざという時」に備えておきましょう。

トランプ大統領の相互関税政策が賃貸経営に与える影響は?

トランプ大統領は「相互関税」政策を発表し、日本に対して24%の高関税を課すと表明しました。しかし直前になって一部の国に90日の猶予を与える方針に転換したため、市場は混乱しています。トランプ政権の核心は「外国製品を売りにくくして、米国の雇用と製造業を守る」という基本姿勢であり、日本に対しても今後、厳しい交渉姿勢が続くと見られています。

それでは、この政策が日本の賃貸住宅経営にどのような影響を及ぼすのかを掘り下げてみます。

輸出産業が集積する東海・北関東は要注意

高関税が実施されれば、日本の輸出企業、特に自動車や電機メーカーは米国市場での販売が困難となり、収益が圧迫される恐れがあります。企業の業績悪化に伴い、コスト削減として給料や賞与が見直されれば、地域経済全体の消費力が低下する可能性があります。
特に自動車関連の雇用が多い東海地方や北関東では、生産調整による派遣社員の雇用減少が起これば、賃貸住宅の需要減・空室率の上昇につながるおそれがあります。競争力の低い物件では、家賃下落の圧力が強まる可能性もあります。
他の地域でも、輸出産業に依存するエリアのオーナーは、こうした経済の連鎖的な影響に注意を払う必要があります。

円安が進めば修繕・メンテ費用が上昇

日本政府は関税政策への対抗措置よりも、国内経済の安定を優先する姿勢を見せており、仮に日銀が金利を据え置き、財政出動を進めるようであれば、「財政・金融の同時緩和」と見なされ、再び円安が進む可能性もあります。
ただし足元ではやや円高傾向にあり、為替相場は流動的です。今後の為替の変動次第では、輸入建材や住宅設備の価格が上昇し、外壁塗装や給湯器交換などの修繕費が増える可能性もあります。古い物件のオーナーには負担が大きくなりやすいでしょう。
逆に円高が進行すれば、輸入資材のコストは抑えられ、修繕や設備更新の費用軽減につながる可能性もあります。
省エネ設備への早期投資により、長期的な運営コストを抑える戦略も有効です。エネルギー価格や光熱費にも、為替の影響が出る可能性があるため、引き続き注視が必要です。

インバウンド需要と海外投資マネーは加速

円安が続くと、訪日観光客にとって日本は“お得な国”となり、観光地ではホテル稼働率がさらに高まると見込まれます。簡易宿所や民泊物件を保有しているオーナーにとっては好機となるでしょう。また、ホテル需要が高まる地域に土地を持つオーナーにとっても、収益向上のチャンスとなるかもしれません。
さらに、割安感のある日本不動産を狙って、海外投資マネーが都心部へ流入する可能性もあります。ただし、地政学リスクや政策不透明感から、慎重姿勢を取る投資家もいるため、エリアごとの動向には差が出る可能性があります。
都心と地方での不動産価格の二極化が、より鮮明になる可能性も見込まれます。

賃貸オーナーの備え

こうした先行き不透明な情勢下では、賃貸オーナーにとって柔軟な対応力が求められます。
まずは、既存入居者に長く住み続けてもらうことが最優先です。
■家賃の据え置き
■更新料の見直し
■設備グレードの向上
などによって、入居者満足度を高めることが安定経営に繋がります
また、現在は比較的低金利が維持されていますが、今後の金利上昇に備え、ローンの借り換えや金利固定化を検討するのも有効な資金管理策です。さらに、物件のエリアやタイプを分散させることもリスク軽減に寄与します。
今後のアメリカの政策展開や為替動向によって経済環境は変化します。常に最新の情報に目を配りつつ、守りを固めながらも、好機を逃さない姿勢が賃貸経営の安定と資産価値の維持につながるでしょう。