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2026.04.30

2026年5月の賃貸経営管理ニュース

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暦年贈与と相続時精算課税 いま選ぶならどっち?

2024年の贈与税改正から2年。生前贈与の考え方は、大きく変わりました。かつては「生前贈与といえば暦年贈与」が定番でしたが、現在はそう単純ではありません。暦年課税は持ち戻し期間が延び、相続時精算課税は逆に使いやすくなったからです。今回は、2026年5月時点の制度を前提に、不動産オーナーが押さえておきたい贈与の考え方をQ&A形式で整理します。

Q1 2024年改正で、何が変わったのですか?

A1 押さえるべき変化は2つです。

ひとつは、暦年贈与の持ち戻し期間が3年から7年へ延長されたこと。 もうひとつは、相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設されたことです。これにより、「節税するならとりあえず暦年贈与」という時代ではなくなりました。

Q2 暦年贈与は不利になったのですか?

A2 不利になったというより、早く始めるほど効果が出やすい制度に変わりました。

相続や遺贈で財産を取得した人が、被相続人から加算対象期間内に受けた贈与は、110万円以下でも相続税の課税価格に加算されます。ただし2026年時点では経過措置の途中です。2026年末までに相続開始なら3年以内、2027年から2030年までは2024年1月1日から死亡日まで、2031年以後にフルで7年以内が対象で す 。なお、延長された4年間の贈与は総額100万円まで加算しない扱いです。

Q3 相続時精算課税は、なぜ注目されているのですか?

A3 以前は「結局、相続時に足し戻される制度」と見られがちでしたが、今は違います。

この制度は、原則として60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与で選べます。改正後は、年110万円の基礎控除が使え、その部分は相続時にも加算されません。さらに、基礎控除とは別に累計2,500万円までの特別控除があり、それを超えた部分の税率は一律20%です。少額を毎年確実に移したい人には、かなり使いやすくなりました。

Q4 結局 、どちらを選ぶべきですか?

A4 目安はシンプルです。

・毎年110万円前後を確実に移したいなら、相続時精算課税が有力。
・年間110万円を超える額を、長期間かけて移したいなら、暦年贈与も有力。

相続時精算課税は、贈与者の死亡時期に左右されにくい点が強みです。一方、暦年贈与は贈与税を払ってでも財産を前倒しで移せるため、資産規模が大きい人ほど有利になる場面があります。

Q5 制度選びで注意すべき点はありますか?

A5 あります。最大の注意点は、相続時精算課税は一度選ぶと、その贈与者について暦年課税へ
戻せないことです。

選択するには、最初の贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までに届出が必要です。なお、制度は贈与者ごと
に選べるため、父は相続時精算課税、母は暦年贈与、という使い分けは可能です。

Q6 不動産オーナーは、どう考えるのが実務的ですか?

A6 税額だけで決めないことです。

賃貸オーナーの場合は、修繕資金、物件の組み換え、法人化、家族への承継方針まで関わります。大切なのは、
「誰に・いくら・いつまでに移すか」を先に決め、そのうえで制度を選ぶこと。                   2026年現在は、少額を長く確実に移すなら相続時精算課税、まとまった額を長期間かけて移すなら暦年贈与。
この整理を出発点に考えるのが現実的です。

ご自身の資産規模と健康状態、そして「誰に・いくら・いつまで渡すか」を明確にし、税理士などの専門家と相談しながら、最適な贈与プランを早めに構築することが資産防衛の鍵となります。あわせて、賃貸経営の承継や家族間のトラブル防止まで見据えておくことも次世代へ資産を円滑に引き継ぐために大切です。

改正区分所有法による老朽化マンション再生手段の拡充

2026年4月から施行される区分所有法の改正では、総会決議の基準を全区分所有者から出席者へ改めることや、所在不明区分所有者を裁判所の決定により決議の母数から除外する制度の創設など、合意形成の円滑化が図られました。しかし、築古の区分所有建物オーナーにとって最も注目すべきは、建替え以外のマンション再生手段が大幅に拡充された点です。本稿ではこの「再生の選択肢の多様化」を中心に解説します。

(※注:普通決議や一部の特別決議の母数は出席者ベースに緩和されますが、後述する建替えや新たな再生手法の決議は、引き続き「全区分所有者」が母数となります。)

従来は建替えか大規模修繕が中心で、売却制度は限定的だった

改正前は、老朽マンションの再生手段は建替え(区分所有者・議決権の各5分の4以上)か大規模修繕が中心でした。建替えは合意形成・資金・仮住まいの面でハードルが極めて高く、2025年3月末時点の全国の建替え実績は累計323件程度にとどまります。建物と敷地をまとめて売却したい場合や取壊して敷地を処分したい場合は、原則として全員同意が必要であり、実務上は極めて困難でした。

改正で加わる4つの新たな再生手段

改正法により、建替え以外に次の4つの手段が新たに多数決決議で実施可能となります。

再生手段の
名称
建物の扱い敷地の扱い主な特徴・
適したケース
建物敷地売却
(第64条の6)
売却する売却する建物と敷地をまとめ
て第三者へ売却し、
代金を分配
建物取壊し
敷地売却
(第64条の7)
取り壊す売却する取壊したうえで更地
引渡しが求められる
再開発案件等に最適
建物更新
(一棟リノベーション)
(第64条の5)
躯体を残し
大規模
更新
維持一棟リノベーション。
建替えに近い効果を
低コストで実現
取壊し
(第64条の8)
取り壊す共有のまま
維持
建物のみを取壊し、
敷地を区分所有者
間で共有して整理

決議要件の大幅緩和─ 全員同意解消、、5分の4条件付き緩和 ─

この4つの新制度はいずれも原則として区分所有者および議決権の各5分の4以上で決議可能です。
従来は原則「全員同意」が必要だった売却や取壊しが多数決で実施できるようになった点は大きな前進です。さらに、耐震性不足、火災安全性不足、外壁剥落の危険、給排水管腐食、バリアフリー基準不適合の5つの客観的事由のいずれかに該当する場合は4分の3に緩和されます。政令指定災害で被災した場合は3分の2まで引き下げられます。客観的事由に該当するマンションでは4分の3決議が可能になりますが、緩和要件の適用にあたっては客観的事由の確認手続が必要となる点にご留意ください。

所在不明区分所有者を母数から除外できる制度と組み合わせれば、合意形成のハードルはさらに下がり得ます。決議に対応する事業手続(組合設立、権利変換計画、分配金取得計画等)も整備されており、決議から実行まで一貫して進められる制度設計です。

「全員同意の壁」はどう変わる?

新制度の基本 4/5(80%)以上の多数決で可能に⇒さらに緩和

客観的事由あり※ 3/4(75%)以上へ引き下げ⇒特例

被災時 2/3(約66.6%)以上へ引き下げ

※5つの客観的事由(耐震性不足、火災安全性不足、外壁剥落の危険、給排水管腐食、バリアフリー基準不適合)

築古区分建物のオーナーが今考えるべきこと ─ 紛争予防の視点から ─

再生手段の拡充は資産価値維持だけでなく、紛争予防の面でも大きな意味があります。
従来は選択肢が限られていたがゆえに、修繕費の負担や管理の方向性をめぐって区分所有者間の対立が膠着するケースもありました。複数の手段を比較検討できるようになれば、管理組合内の議論を建設的な方向に導きやすくなります。そのためには、管理組合において早期に区分所有者名簿の整備と管理規約の改正法対応を進め、合意形成の土台を固めておくことが不可欠です。

改正法施行後は旧法に抵触する規約条項が失効するため、規約見直しも必要です。決議の有効性が後日争われないよう、招集通知における議案の要領の記載にも留意し、管理会社とも連携のうえ早めの対応をお勧めします。

期待から実需へ。上昇要因の構造転換

2026年公示地価は、全国で5年連続の上昇となりました。しかし、従来のような都市部一辺倒の上昇ではなく、インバウンドや海外マネーの流入、半導体拠点の稼働、データセンター需要といった「強い個別要因」が地価を牽引する構造へと変化しています。期待から実需へと移り変わる、新たな地価上昇の背景を整理します。

①日本の地価、上昇の構造が変わった

2026年3月公表の公示地価では、全国平均が前年比2.8%上昇し、5年連続のプラスとなりました。
用途別では右記の通り、全体として上昇基調が続いています。ただ、今年は単に「地価が上がった」と見るだけでは不十分です。上昇の構造そのものが変わってきました。三大都市圏では全用途平均で4.6%上昇しましたが、東京圏と大阪圏が伸びを強めた一方、名古屋圏は住宅地、商業地ともに伸び率が低下しました。地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)も上昇は続いたものの、伸び幅は縮小しています。これまでの「都市部は急上昇、地方は緩やか」という構図から、都市圏の中でも差が出る局面に入ったといえます。

用途別の上昇率

住宅地2.1%
商業地4.3%
工業地4.9%

全国平均 2.8%上昇 (5年連続)

Point 上昇の構造が変わった背景は!

地価上昇の明暗を分けたのは、インバウンドや海外マネーの有無です。東京・大阪は訪日客や再開発で上昇した一方、名古屋や地方四市は需要に変化の兆しが見られます。地方の急上昇も千歳市(半導体)や白馬村(観光)など「強い個別要因」を持つ地域に集中しました。今年は「上がったか下がったか」ではなく「何が押し上げたか」を見極める視点が重要です。

②「半導体と雪」強い個別要因が地価牽引

昨年の公示地価でも注目を集めた北海道千歳市ですが、今年はその意味合いが変わりました。昨年はラピダス工場建設への期待が先行していましたが、今年は試作ラインの稼働開始によって、地価上昇の根拠が期待先行から実需主導へと移っています。商業地では、市全体の平均上昇率こそ前年を下回ったものの、住宅地も上昇幅を広げてお
り、共同住宅用地への需要が市内全域に広がっています。さらに柏台地区では、ラピダス関連企業の受け皿となる新たな工業団地計画も進み、今年の公示地価は、街の変化が現実のものとなってきたことを示しています。

白馬村ではインバウンド需要の回復・定着を背景に、令和6年の観光客数が令和元年以降で最多となりました。業地も高い上昇率を維持しています。

北海道 千歳市 44.1%上昇 特定地点 全国1位 2年連続                                           

長野県 白馬村 22.8%上昇 住宅地平均 全国1位

③静かに進む工業地の地殻変動データセンターと物流施設

今年の公示地価で、もうひとつ見逃せない変化があります。インバウンドや半導体工場ほど派手ではありませんが、全国の工業地では、好調なeコマース市場を背景とする物流施設需要に加え、データセンター関連需要も地価を下支えしています。北海道苫小牧市では千歳市のラピダス効果も波及し、従来の東部工業団地に物流拠点需要に加え、データセンターや再エネ関連投資も広がっています。岩手県矢巾町では東北最大級の物流施設が新設され、需要が高まっています。栃木県栃木市ではNTTがデータセンター用に約13ヘクタールを取得しました。千葉県印西市・白井市でも両需要が重なり、工業地は13%前後の上昇を続けています。象徴的なのが東京多摩地区です。令和5年に閉鎖された昭和の森ゴルフコース跡地では、物流施設3棟とデータセンター8棟への転換計画が進んでおり、時代の変わり目を象徴する事例といえます。

これらに共通するのは、高速道路ICに近く、大規模敷地を確保しやすい点です。賃貸住宅オーナーにとっても、施設周辺では働く人々の住宅需要が生まれます。 半導体工場と同様に、「施設立地が、雇用・住宅需要・商圏形成に波及する」という効果を、工業地の動向から先読みする視点が今後ますます重要になるでしょう。

地価を押し上げる新たな主役

EC拡大やAI需要を背景に、広大な土地を活かした開発が加速。                                       新たな雇用が生まれ、周辺の賃貸需要にも波及します。