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2026.05.31

2026年6月の賃貸経営管理ニュース

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手元の現金を奪う「デッドクロス」の正体と財務・管理戦略

昨今、設備価格の上昇や修繕費の高騰など、賃貸経営を取り巻くコスト環境は厳しさを増しています。さらに金利上昇の足音も聞こえる中、「帳簿上は黒字なのに、なぜか手元に現金が残らない」という事態に直面するオーナーが増えています。この厳しい市況下において、借入れを伴う賃貸経営の場合に早晩顕在化しやすいのが「デッドクロス」という現象です。

①借入条件や償却状況に応じて顕在化する「デッドクロス」とは?

デッドクロスとは、一言でいえば「ローンの元金返済額(経費にならない)が、減価償却費(経費になる)を上回ってしまう逆転現象」のことです。

物件購入当初は多額の減価償却費を計上できるため税負担が軽減されますが、償却が縮小・終了すると帳簿上の利益が跳ね上がり、税負担が急増します。結果として「税引後キャッシュフロー」が赤字に転落し、最悪の場合は納税のために手出しが発生する「黒字倒産」状態に陥るリスクがあります。                                                            これは物件種別や借入条件により、以下のようなタイミングで顕在化する傾向があります。

物件・所有パターン    顕在化しやすい時期・注意点             
築古木造物件購入後早期に注意。 築22年以上の木造は簡便法で4年償却となるケースが多く、減価償却費が早く切れやすいため、税負担が急に重くなりやすい。
RC造・築浅/新築物件返済中盤以降に注意。 減価償却期間は長い一方で返済が進むほど利息が減り経費にならない元金返済の割合がが増えるため徐々に手残りが悪化しやすい。
相続した物件相続直後から注意。 親の取得価額や未償却残高を引き継ぐため、すでに償却が終わっている物件では相続後すぐにデッドクロスが表面化することがある。

②大規模修繕における税務上の留意点

この税負担急増局面への対策として「大規模修繕をして経費を作ろう」と考える方がいますが、ここには留意点があります。屋上防水や外壁塗装などが「資産価値を高める、あるいは使用可能期間を延長する資本的支出」と判定された場合、かかった費用はその年の必要経費にはならず、資産区分に応じた耐用年数で、複数年にわたって減価償却していくことになります。 手元の現金がまとまって出ていくにもかかわらず、初年度に計上できる必要経費は限定的になりやすいため、経営を圧迫する要因となります。

修繕で対策するなら、「どこまでを適切に修繕費として整理できるか」という工事内容の工夫と、税理士との連携が不可欠です。

③プロが実践する「3つの防衛策」

では、この局面をどう乗り切り、手元の現金を残すべきか。実務の最前線では主に次の3つの戦略がとられます。 デッドクロスの対策は、単なる節税策ではありません。大きく分けると「新たな減価償却を作る」「所有形態を見直す」「物件の収益力を高める」という3つの方向性があります。                                        それぞれ有効な場面と注意点が異なるため、自身の資産規模や今後の方針に合わせて検討することが重要です。

デッドクロス対策の3つの方向性

防衛策1:買い増し                                                            ➡ 既存物件の減価償却が切れそうなときに、新たな物件の減価償却費を活用し、ポートフォリオ全体の課税所得を調整したい場合に有効。                                                      注意すべきポイント                                                      節税目的だけの購入は危険。収益性・借入条件・出口戦略の確認が必要。                        

防衛策2:法人成り                                                         ➡ 個人の税率が高くなってきたときに、資産管理法人を活用し、中長期の手残り改善を図りたい場合に有効。                                      注意すべきポイント                                                       登記費用や融資の組み直しなど、移転コストを事前に試算することが重要。

防衛策3:NOI最大化(純営業収益)                                               ➡ 税負担増を根本的に吸収したいときに、賃料アップや空室損削減、設備投資などで物件の収益力を高めたい場合に有効。                                                 注意すべきポイント                                                    投資額に対して、家賃上昇や空室改善の効果が見合うかを確認する。

あなたの物件の現状把握と次の一手

インフレ時代においては「どんぶり勘定」の経営は通用しません。まずは物件ごとの「返済予定表」「減価償却の残期間」そして「修繕計画」を並べて確認し、いつデッドクロスの構造に直面するのかを正確に棚卸ししてください。今後の買い増しや法人化のタイミング、そしてバリューアップ戦略について、現場の最新相場と物件状況をよく知る「信頼できる管理会社」に、一度「所有物件の健康診断」を依頼してみてはいかがでしょうか。

「ペット可」から「ペット共生型」への転換と、
数字で読み解く投資回収のシミュレーション

少子高齢化やライフスタイルの多様化を背景に、ペットを家族として迎える世帯は底堅い推移を見せています。データによれば、現在ペットを飼育している人は28.6%に上り、一定規模の需要が存在し、潜在的なニーズも見込めます(※1)。一方で、不動産ポータルサイトのデータを見ると、ペット飼育相談が可能な賃貸物件の掲載割合は19.3%で、全体の2割にも届いていません(※2)。需要に対する明確な供給不足が存在しているのが現在の賃貸市場です。需要に対する明確な供給不足が存在しているのが現在の賃貸市場です。  

ペット需要は高いのに受け皿が少ない  

現在ペットを飼っている人:28.6%                                                      ペット飼育相談が可能な賃貸物件:19.3%

需要 > 供給 差別化の余地がある市場                                                                     

①安易な「ペット可」が招く修繕費の罠

この需給ギャップを見て「小型犬1匹可・敷金プラス1ヶ月」と安易に条件を緩和する空室対策があります。
しかし、これには経営上のリスクが伴います。一般的な内装のままペット飼育を許可すると、退去時に床のキズや壁の汚損、染み付いたニオイにより多額の原状回復費用が発生しやすくなります。結果として、割増で預かった敷金ではカバーしきれず、手残りの現金が目減りしてしまうケースが少なくありません。表面的な空室は埋まっても、退去時の精算で利益を吐き出しては本末転倒です。

②予防的投資としての「ペット共生型」設備

そこで重要になるのが、単に条件を緩和する「ペット可物件」ではなく、修繕費や長期入居まで見据えた「ペット共生型物件」へのアップデートです。                                              例えば、滑りにくく傷がつきにくいペット対応のクッションフロア(CF)や、腰高までの汚れ防止クロス、見切り材の導入です。一見すると入居者に向けたサービスに見えますが、経営視点で見れば「退去時の高額な修繕費を防ぐための予防的投資」となります。

③経営判断を左右する「居住」と「回収」

ペット共生型のメリットは、家賃プレミアムだけではありません。ペット可物件は供給が限られるため、入居者にとって住み替え先を見つけにくく、長期入居につながりやすいと考えられます(※3)。
こうした特性を踏まえると、設備投資は「家賃アップ」「長期入居」の両面から回収を見込みやすくなります。

☝数字で見る投資回収イメージ

①追加改修費②家賃アップ③入居期間
15万円月額5,000円↗4年間(48ヶ月)
ペット対応床材・クロスの 小規模改修を想定近隣相場より上乗せ長期入居を想定

5,000円 × 48ヶ月 = 24万円 24万円 ー 15万円 = +9万円

☝さらに期待できる効果

空室期間 の短縮入退去回数 の減少募集経費 の削減床・壁の全面張り替えリスクを抑制

⓸ペット専用特約の重要性

ハード面の投資とあわせて重要なのが、「契約・特約」の整備です。退去時のトラブルを防ぐため、国土交通省のガイドライン(※4)を踏まえ、消臭・消毒費用の負担や禁止行為などを特約で明確にします。これにより、敷金精算トラブルを抑え、原状回復をスムーズに進めやすくなります。

データに基づいた戦略的なバリューアップを

ペット需要の取り込みは有効ですが、単なる条件緩和ではなく、設備投資と契約整備をセットで行うことが安定経営の鍵です。退去予定や長期空室のある物件では、投資回収を見据えたペット対応設備への変更や特約の見直しについて、管理会社にシミュレーションを依頼してみてはいかがでしょうか。計画的なバリューアップが、収益基盤の強化につながります。

デジタル化と日用品に潜む、賃貸経営の新リスク

①不動産クラウド不正アクセス、影響調査中

2026年4月、日本の主要な不動産検索サイトに関連する問い合わせデータが、ダークウェブ上で売買されている可能性があるとの報道が広がりました。流出したとされる情報には、氏名・電話番号・メールアドレスに加え、年収、家族構成、転居理由、希望条件、現在の家賃など、引っ越し検討者の詳細情報も含まれるとされています。  

各社の公表内容には差があり、なお影響範囲の調査が続いていますが、不動産IT業界の関係者からは、「複数の検索サイトが同時に攻撃を受けたというより、複数の不動産会社が共通して利用する業務管理システムなどが流出元になった可能性が高いのではないか」との見方も出ています。

不動産業界では、物件情報の掲載から問い合わせ対応、顧客情報の管理まで、日常業務の多くがITサービスの連携によって成り立っています。そのため、仮に一つのIT企業やシステムで問題が起きれば、接続先にある情報まで連鎖的に影響を受けるおそれがあります。業界全体でデジタル化が進む今、ひとつのシステム不備が連鎖的な被害につながるリスクが高まっています。

とりわけ不動産業界が扱う個人情報は、住所、年収、家族構成、転居理由といった、悪用されれば深刻な被害につながりかねないものが少なくありません。犯罪者にとっては使い道のある情報がまとまっている分、今後も狙われやすいのは間違いありません。

しかも、業界のデジタル化が進むほど、攻撃側にとっての突破口は増えていきます。どこか一カ所の防御が破られただけで、関連先の情報までまとめて流出する。そんな「一点突破・一網打尽」のリスクは、これからさらに意識しておくべきでしょう。

賃貸オーナーにとっても、これは他人事ではありません。管理会社や仲介会社がどのような業務システムを使っているのか、自分の物件情報や入居者情報がどこに預けられているのかは、意識しておきましょう。加えて、不審なメールや電話が急に増えていないかも、異変を察知する初期サインになります。データの預け先を把握すること、防犯意識を持つこと。その両方が、これからの賃貸経営には欠かせない視点になっていきそうです。

②入居者の半数が知らない、モバイルバッテリー火災、賠償責任は誰に?

スマートフォンの充電に欠かせないモバイルバッテリーが、賃貸物件の新たなリスクになりつつあります。損保ジャパンの子会社・マイシュアランス(東京)が2026年3月、賃貸住宅居住者1000人を対象に行った調査では、「充電中のバッテリーが原因で自室の壁や床が損傷した場合、賠償責任は自分にある」と正しく認識していた人45.1%にとどまり、残りの半数以上は、責任の所在を把握しないまま日々使用していることになります。

入居者の賠償責任の認識調査                                            認識識できていない・わからない:54.9%   正しく認識:45.1%

取り扱いの実態は、さらに深刻です。使用中に異常を感じた経験がある人のうち、39.3%は「危険を感じつつもしばらく使用を続けた」「今も使用している」と回答しています。リスクを自覚していても、行動が伴っていない入居者が3人に1人いる計算になります。また、保有者の26.5%が「自宅のどこかに置き忘れたバッテリーがあるかもしれない」と回答しており、管理されないまま自宅に眠るバッテリーが予期せず発火するリスクも軽視できません。

火災件数も増加が続いています。消防庁によると、モバイルバッテリーを原因とする火災は2024年の年間290件に対し、2025年は482件と、前年と比べ7割増となりました。公共交通機関での発火も多く、航空機内での規制強化も進んでいます。

モバイルバッテリーの火災調査                                             2024年:290件 ⇒ 2025年:482件   前年比:7割増↗

オーナーとして、入居者側に賠償責任がある場合でも、まず損害を受けるのは物件そのものという点です。入居者が加入する火災保険の内容によっては、原状回復費用がオーナー負担となることも考えられます。管理会社とも連携し、入居者が借家人賠償責任保険を含む適切な保険に加入しているかどうかを確認しておく必要がありそうです。便利なモバイルバッテリーですが、思わぬかたちで賃貸住宅の安全に影響を及ぼす事態になっています。入居時や更新時の案内に、モバイルバッテリーの使用・保管・廃棄に関する注意事項を組み込み、異常を感じた場合の相談先も明示しておくことが有効かもしれません。