- 2021.06.02
万が一ご家族が亡くなったら相続手続きをしなければなりませんが、手続きによって期限や方法が異なります。もし、うっかり期限を過ぎたら行使できる権利が無くなったり、ペナルティーを受ける場合もあります。この記事では、相続手続きについて時系列で解説。万が一の場合の基礎知識として知りたい人や、これから手続きを進めていかなければならない人は参考にしてください。
【7日以内】死亡届、火葬許可申請書を役所に提出
人が亡くなったら、まずは「死亡届」を提出しなければなりません。死亡届の提出期限は「死亡後7日間」とされています。遅れると「過料」というお金を払わねばならないペナルティーがかかる可能性もあるので、急ぎましょう。
ー死亡届の提出
死亡すると、親族は医師から「死亡診断書」または「死体検案書」を渡してもらえます。死亡届と死亡診断書はセットになっているので、死亡届の部分に必要事項を記入して市町村役場へ持参しましょう。役所の担当課で死亡届を提出すると、戸籍を書き換えてもらえます。必ず死亡後7日以内に済ませて下さい。
ー火葬許可申請書の提出
死亡届を提出する際、同時に火葬許可申請書を提出すると、役所から死体埋葬火葬許可証をもらえます。これがあれば火葬できるので、葬儀会社などと相談してお通夜や葬儀、火葬を済ませましょう。
【14日以内】年金受給停止、健康保険資格喪失や世帯主の名義変更
ー年金の受給停止
被相続人(亡くなった方)が年金を受け取っていた場合、受給停止をしなければなりません。国民年金は死亡後14日以内、厚生年金は死亡後10日以内に年金事務所または年金相談センターへ報告しましょう。「年金受給権者死亡届」と「亡くなった方の年金証書」を提出すれば年金を止めてもらえます。なお、日本年金機構に個人番号(マイナンバー)が収録されている方は、提出をを省略できます。なお、報告せずに年金を受け取ってしまったら、後で返還しなければなりません。「不正受給」とされる可能性もあるので、早めに書類を提出しましょう。
ー健康保険の資格喪失
健康保険や介護保険も資格喪失の手続きが必要です。国民健康保険は市町村役場、社会保険は加入している健康保険組合に連絡して書類を提出しましょう。また社会保険の被保険者が死亡すると、扶養されていた人は「埋葬料」が、葬祭を行った人(喪主)は「葬祭費」が支給されます。市町村役場へ行った際は併せて忘れずに申請しましょう。
ー世帯主の変更
被相続人が住民票上の「世帯主」だった場合、役所で世帯主の変更届を出しましょう。
ー公共料金等の名義変更
被相続人が電気・ガス・水道の公共料金の契約者だった場合、それぞれ解約するのか変更するのかを決めて、業者に連絡しましょう。電力会社やガス会社へ連絡して名義変更しましょう。ですが、特に期限はありません。他にも、携帯電話、NHK受信料、インターネットやクレジットカードなども手続きが必要です。注意が必要なのは、預貯金などの金融財産や、不動産、自動車など、相続財産となるものです。これらは遺産分割協議が終了し、誰が相続するのかが決まってからでないと、名義変更はできませんのでご注意ください。
【3カ月以内】相続放棄、限定承認、遺言書の調査や遺産分割の準備
ー相続には3種類ある
相続には、すべてを相続する単純承認と、負債もあるがプラス財産の方が多そうだという場合にプラスの財産の限度内で負債返済して相続する限定承認、一切相続しない相続放棄の3種類があります。相続人はどれかをどれかを選択する必要があります。
ー期限は3カ月以内
限定承認と相続放棄は、相続開始後3カ月以内に家庭裁判所で「相続放棄(限定承認)の申述」をしなければなりません。3カ月を過ぎると単純承認したとみなされますので、早めに手続きをしましょう。なお、この期間は請求により伸ばすことも可能です。相続放棄や限定承認は、被相続人の住所地の家庭裁判所で行います。被相続人の戸籍謄本や住民票除票、放棄したい相続人の戸籍謄本などの必要書類を集めて「相続放棄(限定承認)の申述書」を作成して提出してください。
限定承認は、相続人が全員揃って手続きしないといけないので相続放棄より手間がかかります。特に、相続人が多い場合は、早めに準備することをオススメします。なお、相続放棄は単独でできます。
ー遺言書の調査と検認
遺言書の有無を早めに確認しましょう。遺言書があると遺言内容に従って遺産相続する必要があるからです。自筆証書遺言なら自宅で保管されているか法務局に預けられているケースが多数です。公正証書遺言は公証役場で保管されているので調べてみてください。自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかったら、家庭裁判所で検認を受けましょう。検認に期限はありませんが、検認を受けずに遺言書を開封するのは違法です。
ー相続人と相続財産の調査
遺産分割協議に備えて相続人調査と相続財産調査をしましょう。相続人調査には、被相続人の死亡時から遡って出生までの戸籍謄本を取得する必要があります。
財産を把握するには、金融機関へ問い合わせて「残高証明書」を取得したり証券会社へ取引内容を照会したり、不動産・車などの各種資料を集めたりする地道な作業です。相続人調査、相続財産調査に期限はありませんが、これらが終わらないと遺産分割協議を始められません。限定承認や相続放棄するかどうかの判断にもかかわるので、早めに調べましょう。
【4カ月以内】亡くなった人の準確定申告
被相続人に所得があった場合(不動産の賃貸収入など)には、相続人が「準確定申告」をしなければなりません。期限は、原則として亡くなった日から4カ月以内です。被相続人が前年分の確定申告をしていた場合は、準確定申告をする必要がある可能性が高いですが、具体的にどのような場合に必要になるかは、国税庁ホームページで説明されている「確定申告が必要な方」を参照してください。事業や所得に関する資料などを参照して確定申告書を作成し、税務署へ提出すれば手続きが完了します。ご自身で申告するのが手間になる人や方法がわからない人は、税理士などの専門家にも相談してみてください。
なお、準確定申告は確定申告とイコールなので還付金が出る場合もあります。その際は、遺言や遺産分割協議により相続分が決まっている場合はその相続分により、相続分が決まっていなければ「法定相続分」により、還付金を分配することになります。
【10カ月以内】相続税の申告と遺産分割協議
ー相続税の申告納税
遺産の額が基礎控除を超えていれば、相続税の申告と納税をしなければなりません。申告も納税も相続開始後10カ月以内が期限です。過ぎると延滞税がかかったり税務署から督促されたりするので、遅れないようにしましょう。
基礎控除額は、3,000万円+(法定相続人の数×600万円)で、法定相続人が1人の場合には3,600万円、相続人が2人の場合には4,200円、相続人が3人の場合には4,800万円となり、法定相続人が多い相続ほど基礎控除は多くなります。ちなみに、10人に1人程度の割合で相続税がかかってくると言われています。
なお、相続税の納税は、遺産分割協議が済んでいなくても行う必要があります。その場合、とりあえず「法定相続分」によって申告を済ませ、後に遺産分割協議ができたときに「更正請求」を行って払いすぎた分の還付を受けたり、修正申告して不足分を支払ったりします。税金は待ってくれないんですね。
ー遺産分割協議書の作成と相続手続き
遺産分割協議には期限がありませんが、相続税の申告納税の期限もあるので、できるだけ相続開始後10カ月以内に終えるのが良いでしょう。相続人同士で合意ができたら遺産分割協議書を作成します。その後、遺産分割協議書をもとに不動産や株式の名義変更、預貯金の払い戻し、保険金請求などの手続きを進めてください。
【1年以内】遺留分の侵害額請求
遺留分は、例えば、財産全てを相続人以外に贈与するという遺言書があったとしても、相続人を保護するために最低限の遺産は確保されるようにするための制度です。そのため、相続人は遺留分侵害額請求をすることで、相続財産を遺留分の限度で取り戻すことができます。ですが、遺留分侵害額請求は、遺留分侵害の事実を知ってから1年以内に行わなければなりません。不公平な遺言書や生前贈与の事実を知り、遺留分を返還してほしいなら早めに対応しましょう。
【3年以内】生命保険の死亡保険金
被相続人が生命保険に加入していた場合、残された人は死亡保険金を受け取れる可能性があります。死亡保険金の請求期限は死亡後3年以内となっていて、期限を過ぎると高額な保険金であっても一切受け取れなくなります。被保険者が死亡したら、早めに生命保険会社へ連絡を入れて保険金の請求をしましょう。
ちなみに、相続人が保険金の受取人として死亡保険金を受け取る場合は、法律上相続財産には該当しません。受取人固有の財産となり遺産分割の対象とならないため、他の相続人の同意などを得る必要なく、受取人が保険会社へ請求をすれば死亡保険金を受け取ることが可能です。相続放棄をしたとしても受取人固有の財産なので受け取ることができます。ただし、相続財産に含まれませんが、相続税を算出する場合においては「みなし相続財産」として含まれることになりますのでご注意を。
また、国の保険や年金からも、家族が保険金を受け取れる制度があります。ただし、自分から請求しないともらえず、時効もあります。年金は5年、その他保険は2年を過ぎると請求できなくなりますので、忘れずに請求しましょう。
相続手続きには期限が設けられているものが多数あります。死亡届、健康保険、年金、相続放棄などは特に急ぐ必要があるといえるでしょう。とても大変な時期だとは思いますが、知らない間に期間を過ぎてしまわないように、優先順位を意識して着実に取り組んでいきましょう。困ったときには税理士や弁護士などの専門家を頼りましょう。もちろん当社でも大丈夫ですよ。
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