- 2023.10.06
改正民法の保証契約規定と施行後の更新実務
改正民法の施行以降に賃貸借契約が更新された場合に、従前の連帯保証契約には改正規定が適応されるか?
2020年4月1日に施行された改正民法の465条2第2項により、「保証人が負うべき限度額(極度額)を定めなければ保証契約は効力を生じない」と規定されました。したがって改正日以降に締結する賃貸借契約では、契約書に記載する保証人の負うべき極度額を、「●円」とか「月額賃料の●カ月分」としなければ、その保証の効力が生じないということになります。
他方で、改正前に締結されていた賃貸借契約は、保証人の極度額について規定していないというケースが圧倒的に多いのが実情です。そのケースの場合、2020年4月1日以降に更新される賃貸借では、保証効力の扱いはどうなるのでしょうか?
賃貸借契約の更新では、保証人との間で新たに更新の書面を取り交わすことはなく、賃貸人と賃借人だけで更新合意書等の書面を取り交わすことが多いと思われます。
また、自動更新条項が定められている場合は、更新合意の書面を取り交わすこと無く契約が更新されるのが一般的です。
このため、改正日以降の賃貸借の更新の際には、賃貸人と賃借人と保証人との間で、新たに改正民法の要件を備えた保証契約(極度額の定めをした保証契約)を締結しなければ、更新後は保証の効力を失ってしまうのか? という問題があります。
更新のたびに保証人との合意は必要か?
この答えを考える前に整理しておきたい論点があります。それは、賃貸借契約が更新される都度に、「保証人と改めて保証契約を締結する必要があるのか」という問題です。この点については、最高裁判所平成9年11月13日判決が、
- 原則として、改めて保証人と契約を締結しなくとも賃貸借契約更新後も保証人の責任は継続する
- 例外として、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情がある場合や、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合は保証人の責任は継続しない
と判断しています。したがって、賃貸借契約の更新の際に、別途保証人と更新等の合意をしなくとも、原則として保証人の責任も継続するということになります。
上記を確認したうえで、改正日以降に賃貸借契約が更新され、その契約書に極度額の定めがされていなかった場合でも保証人の責任が継続するのか、について考えてみます。この問題は、
- 賃貸借契約の更新の際に、保証人とは書面の取り交わしはしない場合(賃借人とのみ更新合意書を取り交わす、もしくは自動更新条項により契約が更新される場合)
- 賃貸借契約の更新の際に、保証人とも改めて保証契約の取り交わしをする場合
の2つのケースに分けて考える必要があります。
新たな合意なければ適応されない
まず①の場合は、更新時に新たに保証人と契約をしなくとも、前述の最高裁判例の解釈に基づけば、当初の保証契約の責任の効力が更新によっても失われず、そのまま継続するものと解されます。改正民法施行後の更新契約では、保証契約に関して「新たに」合意をするものでもありませんので、改正民法の適用は受けずに極度額を別途定める必要もない、というのが法務省の見解のようです。
また、同様の判断をした裁判事例として、東京地方裁判所令和3年4月23日判決があります。
次に②のように、保証人と改めて保証契約の取り交わしをする場合は、改正民法施行後に「新たな」保証に関する合意があったといえるため、保証契約は改正民法の適用を受けることになります。
したがって、保証契約の更新で極度額の定めをしなければ保証は無効となってしまい、保証人の責任は継続しないということになります。
合意(自動)更新、法定更新のケースは?
以上を踏まえると、改正民法の施行日以後の賃貸借契約の更新においては、保証人から何かしらの書面にサインを貰おうとすると、改正民法の規定が適用されるので注意が必要です。
なお、上記は、賃貸借契約が「合意更新及び自動更新」された場合です。改正民法の施行日以後に賃貸借契約が「法定更新」された場合(更新の合意もなく、自動更新条項も定められていなかった場合)はどうなるのか、という問題もありますが、この場合についても、前述した東京地方裁判所令和3年4月23日判決が、合意更新の場合と同様に、原則として保証人の責任は従前と同様に継続するという判断をしています。
200億円のマンション、ゼネコン施行ミス多発
一部屋200億円以上の記録マンション
森ビル(東京)は、六本木ヒルズやアークヒルズなどに続く最新作「麻布台ヒルズ」の一部を公開しました。東京都心の六本木と虎ノ門の中間点にある麻布台エリアに、約330メートルの高層ビルと、テニスコート90面分以上となる約2万4000㎡もの緑地を持つ複合施設です。用地買収を始めてから35年も要し、バブル崩壊やリーマンショックなどの不況も乗り越えて完成にこぎ着けました。
特に話題なのが分譲・賃貸合わせて約1400戸の超高級マンションです。現在、公開されている情報では賃貸住宅の家賃は52万円〜120万円で法人契約のみ。分譲マンションの価格は平均20億円とされ、最上階は200億円以上だったと予想されています。日本の分譲マンション価格の最高記録を大きく更新しました。この部屋の内装や設備、正式な価格は公開されていません。どんな人が購入するのかはわかりませんが、9年前に森ビルが開発した虎ノ門ヒルズの登記簿を参考にすると、物件オーナーはセカンドハウスや投資用として購入する人がほとんどのようです。
建設会社社長によると「森ビルの高級住宅の管理はどのデベロッパーよりも厳格です。以前、内装工事業者が間違えて、工事予定ではない別の部屋のドアノブに『触れた』ことがあり、当社も含めて出入りの施工会社全てに、再発防止が徹底されたこともあります」といいます。まさに日本最高峰の集合住宅といえる麻布台ヒルズに注目が集まっています。
ゼネコン施行ミスの背景に構造的問題
今年に入ってから大型ビルなどの工事現場で施工不良が相次いでいます。3月には北海道・札幌で建設中の26階建て高層ビルで施工不良と数値改ざんが発覚しました。施工していた大成建設(東京)によると、すでに工事は全工程の2割以上まで進んでいましたが、組み終えた鉄骨を解体してからの「建て直し」を発表しています。
同じく大成建設で建て替え工事が進んでいた東京・世田谷区役所庁舎は、施工計画に問題があったため工事が2年近くも延長する見通しになってしまいました。また、6月末に竣工予定だった東京・港区のJR田町駅前の超高層ビル「田町タワー」では、床の施工不良が発覚し完成が同年9月末に遅れることが明らかになりました。
施工の清水建設(東京)によれば、一部のコンクリート床の高さがズレて工事が続けられなくなったとのこと。専門家によると鉄骨の柱についての管理が適切でなかったようです。問題を起こしたのは大手建設会社ばかりなので驚きが拡がっています。建築業界に詳しい記者は「ゼネコンは建材費と人件費のダブル値上げにさらされている。一方で、再開発が活況で1000億円規模の大型案件がいくつもあるため工事現場に割ける労力が減っている。帳票管理のデジタル化などで効率を高める工夫も進んでいるが、まだまだ追いついていません」と原因を語ります。
働き方改革によって週休二日制の導入が増えていることも影響しているようです。ある金融機関の建設業界担当者によると、某ゼネコンでは工事に手が回らず辞退した案件が多く、機会損失は年間1000億円から2000億円にも上っているようです。
都内の管理会社によると、賃貸住宅建設やリフォーム現場でも値上げと工事遅延がたびたび起きていて、その影響は賃貸業界にも拡がっています。ゼネコンの施工不良から見えてくるのは、すぐには改善できそうにない建築業界の苦境でした。
タワマン節税に国税のメス
富裕層に人気の「タワマン節税」にメスが入りそうです。今年6月に国税庁は相続税に関するマンション評価の計算式を変更することを発表しました。これまで市場価格の2割程度まで低く評価されることもありましたが、改正で評価が6割以上にまで引き上げられる見込みです。タワマン節税は10年ほど前から話題になり、節税効果が高すぎで不公平と問題視されてきました。
しかし、「政治家もやっているので禁止されない」などといった話がまことしやかに囁かれており、これまで特別な対策はとられていませんでした。しかし昨年4月の最高裁判決で、路線価をもとにして2棟で3億3,370万円の財産評価で相続されたマンションに対し、国税当局が計12億7,300万円と4倍近い評価を算定し、3億3,000万円を追徴課税したことで、マンションの相続財産評価全般が見直されることとなりました。新マンション評価は2024年1月に始まる予定です。
資産家の相続対策に詳しい不動産会社代表によると「来年までに財産を贈与したいという相談もある」そうですが、こうした駆け込み贈与自体が税金逃れの過剰な節税とされ追徴課税の対象になることもあるようです。ジワジワと節税策を封じる力が強まっている中で先ほどの代表は「後出しジャンケンでも税務当局にはかなわない。常識的な節税策を提案するしかできない」と嘆いています。
保証会社活用時代の入居審査と滞納督促の現状
今回は「入居審査と滞納督促の現状」について賃貸管理の現場から報告いたします。賃貸管理の先輩からは、昔の賃貸業務では「入居審査と滞納督促」が重要な仕事だった、という話をよく聞きます。現在は保証会社に大部分を委託していますが、すべてを丸投げしてよい、ということではありません。保証会社に家賃集金を任せていても、その他の部分で入居者さんと向き合うのはオーナーと管理会社ですし、保証会社と契約していない借主さんも少なからずいますので、この業務と無縁ではいられないのです。
何年か前に、半年も空いていた築20年超の木造アパートに、40代男性単身者から入居申込みがあり、接客中の本人の言動や勤務条件など加味して「入居不可」としたのですが、そのあとで保証会社の審査OKの連絡があり入居を認めた、という案件がありました。
当時は保証会社の審査結果を最優先していたのです。入居してすぐに家賃滞納が始まりましたが、保証会社から代替支払いされていて、私たちが滞納を知ったのは3カ月後でした。保証会社によると、まず電話と文書による督促を継続し、法的手段はまだ先になる、とのことでした。
しかし、この入居者は滞納以外にも、入居ルールを無視した夜中の騒音、指定以外のゴミ捨て、玄関前の通路に物を置く、などのトラブルを起こすようになり、管理スタッフが出向いても、居留守や、ときに恫喝のような態度をとって手を焼かせました。両隣の借主も不安を訴えています。最後は保証会社と協力して明け渡し訴訟を提訴し、強制手続きによる明け渡しとなりました。入居してから一年弱の時間を要してしまいました。
その経緯から入居審査への取り組みを改変して、自分たちの基準と保証会社の審査結果の双方を重視することにしました。当社の審査はOK、保証会社がNOの場合は、基準を満たす個人の連帯保証人を立ててもらえれば入居を許可するケースもあります。
複数の保証会社がNOとする場合は、借主にそれなりの履歴があるはずですから、万一のときは連帯保証人が頼みの綱となります。連帯保証人の予定者には電話をして、直接に意思を確認するようにしています。
反対に、当社がNOで保証会社がOKのケースでは、それが空室期間の長い物件の場合は「やっと決まる」という想いから、断るのが勿体なく感じます。しかし、前述のような入居者を入れてしまうと大家さんが受けるダメージは大きいです。申込者の支払い能力に対する不安は保証会社がカバーしますので、私たちは「他の入居者に迷惑をかけないか」のみに焦点をあてて答えを出すようにしています。
「疑わしければ断る」のは簡単ですが、決まりにくい物件の稼働率を高めるのも賃貸管理の役目ですので、そのバランスが難しいところです。保証会社の活用が前提であっても、管理会社の入居審査が不要ということにはなりません。
つぎは滞納督促です。これも先輩たちから「初期督促が何より重要」と教えられました。初期督促とは、文書、電話、メール、最近ではアプリなどを使って、本人に滞納を告げ支払いを促す行為です。その期間は15日から最大で30日と決めています。
一度の通知で入金される「ウッカリ滞納」ならよいのですが、初期督促を何度か行っても返事と入金がないときは、何らかの原因があると判断して、次の段階の「訪問と連帯保証人への通知」を開始します。
この判断に2~3カ月も費やしてしまうと、オーナーの損失が増えてしまうことになりかねません。初期督促とは、「ウッカリ滞納」と「確信的滞納」を早めに見極める行為といえるので、発生から15日、遅くとも30日の間で繰り返し行う必要があるのです。
残念ながら確信的滞納者を入居させてしまったことが判明したあとは、訪問を繰り返し、連帯保証人には借主に支払うように促してもらいます。それでも入金の約束や入金がないときは、連帯保証人への請求に切り替えます。保証会社の入らない契約は「連帯保証人が頼みの綱」と書きましたが、そのために借主との属性と、勤務状況や持ち家などの資産状況を吟味していますので、支払いに応じるはずなのですが、まれに「無い袖は振れない」と反応されることもあります。
その場合は、内容証明郵便なども送付しながら、借主と連帯保証人に交渉を続けます。当社でも、ごくまれに訴訟に発展してしまうことがありますが、それを判断する3カ月の間に、初期督促と任意による支払い交渉を根気よく続けて、その記録を残し、万一訴訟になってしまったときに役立つ証拠とします。
訴訟は法律の専門家にお任せしますので、私たちの任務は、初期督促で「うっかり滞納」を入金させ、「確信的滞納」を炙り出し、連帯保証人に役目を果たしてもらい、何とか訴訟に頼らずに滞納を解決することと認識しています。思えば、昔は管理物件のすべての家賃入金に携わっていたのですから、保証会社の登場で楽になったものだと思います。
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